本年度の研究目的である「心機能改善効果の高い移植に適した細胞の探索」は間葉系幹細胞を中心に探索、評価したところ、いくつかの候補になりえる細胞を絞り込むことに成功した。この候補細胞としては、骨髄、臍帯血、子宮内膜(手術検体)、月経血や胎盤のような組織を由来とする細胞であった。子宮内膜以外の組織は非侵襲性の高いため、患者への負担も少ない上に、組織そのものが大きく複雑な構造を持つため、様々な種類の細胞を大量に樹立することが可能である。これらの理由から、私たちが選択した組織は理想的な細胞ソースとして期待できる。今回、私たちはこれらの組織から初代培養細胞を特定条件下における効率的な培養に成功した。また特性解析として、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析、各遺伝子のプロモータ領域のメチル化解析、FISH解析、さらにはCGH法による細胞のクロマチン状態について解析し、樹立した細胞の安全性も評価した。次に心筋分化誘導能について共培養法を用いて検討したところ、分化誘導効率に大きな差があることが明らかとなった。この心筋細胞への分化誘導効率の差は各細胞の遺伝子発現やクロマチン状態と相関がある可能性が示唆されるため、併せて解析することで有用な間葉系幹細胞の特定、並びに心筋分化メカニズムの一端を解明できる可能性がある。今後はこれらの細胞の特性を解析しつつ、さらなる有用な細胞ソースの探索、並びに評価も引き続き行っていく。
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