ステロイド誘発性骨粗鬆症は現在、最も頻度の高い続発性骨粗鬆症である。グルココルチコイドの骨組織に対する直接的作用が少しずつ明らかにされてきているが、その作用機構については不明な点が多い。本研究の目的は、"骨量だけでなく骨の質の維持に重要な役割を果たす骨細胞"に対するグルココルチコイドの直接的作用が、ステロイド誘発性骨粗鬆症の病態生理の中核にあるという仮説のもとに、生理的および病理的条件下におけるグルココルチコイドの骨細胞、骨芽細胞に対する作用とそのメカニズムを明らかにすることである。 21年度には、グルココルチコイド受容体(GR)-floxマウスとDMP1-Creマウスを交配させ、骨細胞においてのみGRを無くしたマウスを作出しマイクロCTによる骨解析を行った。その結果、骨細胞特異的GRノックアウトマウスでは対照群マウスと比べ、ベースラインの骨量に顕著な差は見られなかっ。そのため、骨細胞における内在性のグルココルチコイドを介したシグナル経路の骨代謝に関する寄与は大きくないと考えられる。 一方、野生型C57BL/6マウスに合成グルココルチコイドであるプレドニゾロンのペレットを植え込んで、1ヶ月間継続投与し、マイクロCTによる3次元の骨微細構造の解析、骨代謝マーカーを用いた生化学的解析、定量的PCRによる遣伝子発現解析を行った。その結果、プレドニゾロン投与群ではコントロール群と比べ、骨形成マーカーに減少傾向が見られ、骨量は有意な減少を示した。mRNAレベルでは既知のGRターゲット遺伝子の発現が抑制され、骨細胞マーカーの減少も見られた。加えて、いくつかのアポトーシス関連遺伝子の顕著な増加が見られた。したがって、外来性のグルココルチコイドの作用の少なくとも一部は、骨細胞のアポトーシス誘導を介することが示唆された。
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