グルココルチコイドの骨組織に対する直接的作用が少しずつ明らかにされてきているが、その作用機構については不明な点が多い。本研究の目的は、"骨細胞"に対するグルココルチコイドの直接的作用が、ステロイド誘発性骨粗鬆症の病態生理の中核にあるという仮説のもとに、生理的および病理的条件下におけるグルココルチコイドの骨細胞、骨芽細胞に対する作用とそのメカニズムを明らかにすることである。 22年度には、グルココルチコイド受容体(GR)-floxマウスとDMP1-Creマウス、Osterix-Creマウスをそれぞれ交配させ、骨細胞においてのみGRを無くしたマウス、骨細胞および骨芽細胞でGRを無くしたマウスを作出した。マイクロCTによる解析の結果、骨細胞特異的GRノックアウトマウスでは対照群マウスと比べ、8週齢では骨量に差は認められなかったものの、12週齢、6ヶ月齢では骨量の低下を示した。そのため、骨細胞における内在性のグルココルチコイドを介したシグナル経路は、骨量の維持に寄与していることが示唆された。 また、これらのGRノックアウトマウスに合成グルココルチコイドであるプレドニゾロンのペレットを植え込んで、1ヶ月間継続投与し、マイクロCTによる3次元の骨微細構造の解析、骨代謝マーカーを用いた生化学的解析、骨形態計測法による解析を行った。その結果、骨細胞特異的GRノックアウトマウスでは対照群マウスと同様に、プレドニゾロン投与により、骨形成マーカーに減少傾向が見られ、海綿骨の骨量は有意な減少を示した。一方、皮質骨の骨量は、対照群マウスではプレドニゾロン投与によって顕著な減少が見られたものの、骨細胞特異的GRノックアウトマウスでは抵抗性を示した。したがって、外来性のグルココルチコイドの皮質骨に対する作用は、骨細胞に対する直接的作用が大きく寄与することが示唆された。
|