研究課題
転写抑制因子であるDACH1はDNAコピー数解析で脳腫瘍においてホモ欠失を示す候補癌抑制遺伝子として同定された。昨年度までに脳腫瘍細胞株U-87MGにドキシサイクリンでDACH1の発現誘導ができる細胞株を樹立し、細胞増殖への影響や幹細胞様の集団であるニューロスフェアの形成能の違いを明らかにした。また、皮下移植モデルを用い、DACH1の発現がin vivoにおける腫瘍形成能を低下させることを示した。本年度は、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析によって同定されたDACH1の下流の遺伝子が癌幹細胞の維持にどのような影響を与えるか解析し、DACH1による腫瘍抑制能を明らかにすることを目的とした。昨年度までに腫瘍幹細胞様のニューロスフェアを形成するU87MG細胞にDACH1を発現誘導することで分化が誘導されることを見いだしていたが、このニューロスフェアが腫瘍幹細胞のマーカーであるCD133やネスチン陽性細胞の集団であることを免疫細胞染色及び定量的PCRによって明らかにした。DACH1により発現抑制されるFGF2の効果を明らかにするために、レンチウィルスでFGF2を導入した細胞を作製した。DACH1を発現抑制させた細胞ではニューロスフェアの形成及び脳室内での腫瘍形成能が低下した一方で、FGF2の強制発現によってニューロスフェア形成及び造腫瘍脳が回復した。これらの結果は、DACH1がFGF2の発現を抑制することで腫瘍幹細胞の数を減少させ、脳腫瘍ではDACH1の欠失によるFGF2の発現亢進が腫瘍増大をひきおこすことを示唆している。
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