研究概要 |
本研究は、エンドトキシンショックモデルマウスを用いて、エンドトキシンと傷害された細胞から放出されたATPによるMφの活性による敗血症性ショックの発症メカニズムの経路を検討した。 チオグリコレートをマウスに接種し、腹腔内に浸潤したMφ(PEMs)を用いてATP刺激培養をおこなった。その結果、PEMsはATP刺激によりMIP-2を産生した。ATPは細胞上のP2 purinergic受容体(P2X_<1-7>,P2Y_<1,2,4,6,11-14>)に結合することが知られている。そこで、どのP2 purinergic受容体に結合するか検討した。PEMsは細胞表面上のP2purinergic受容体のP2X_7,P2Y_2,P2Y_4,P2Y_6受容体にATPが結合するとMIP-2が産生されることが明らかになった。またPEMsのATP刺激によるMIP-2産生はERK1/2とp38 MAPKの細胞内シグナルが活性化していた。 LPSとD-ガラクトサミン(GaIN)を用いたエンドトキシンショックモデルマウスを使用して、エンドトキシンと細胞外ATPによるMφの好中球誘導を検討した。その結果、LPS/GalN接種したところ血清中にTNFαとMIP-2の急激な上昇が認められ、次にATP、最後にALTの上昇が認められた。また、肝臓内に好中球の増加が認められた。そこで、エンドトキシンによる二次性肝不全をP2X_7受容体欠損マウスとコントロールマウスと比較したが、両マウス群に有意な差は認められなかった。 本検討により、敗血症により傷害された細胞から放出されたATPはMφを活性化させMIP-2を産生して好中球を遊走する経路が示唆された。しかしながら、この経路は多種のP2purinergic受容体が関与しており更なる検討が必要とされた。
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