研究概要 |
ウイルス感染はToll-like receptor(TLR)やRIG-I-like receptor (RLR)といった自然免疫受容体により認識されI型インターフェロンや炎症性サイトカイン産生といった自然免疫応答が誘導される。我々は、これまでTLRやRLRの情報伝達経路に位置しインターフェロン産生に必須の役割を果たすキナーゼTBK1と結合する分子としてNod-like receptor(NLR)に属するNLR-tb(別名、NLRC5/NOD27)を同定した。NLR-tbの過剰発現はTBK1の活性を抑制したことから、インターフェロン産生を抑制する役割を果たしていることが示唆された。一方、NLR-tbはIL-1βの産生を誘導する活性を有していたことから、ウイルスやその他病原体感染後に伴う炎症反応め誘導に関与している可能性が考えられた。そこで、NLR-tb欠損マウスを作製し、ウイルス感染後の自然免疫応答を中心に解析を行った。RNAウイルス(NDV)、DNAウイルス(HSV-1)、TLRリガンド各種を用いて樹状細胞やマクロファージからのインターフェロンやIL-1βの産生を検討したが、NLR-tb欠損細胞と野生型細胞において有意な差は認められなかった。また、これまで知られているIL-1β誘導活性を示す病原体成分(ザイモザン)や結晶(尿酸結晶)を用いた実験においても、NLR-tb欠損マウス樹状細胞やマクロファージからのIL-1β産生に差は認められなかった。以上のことから、NLR-tbはこれらとは別の病原体成分や結晶に対するサイトカイン誘導に関与している可能性が考えられた。また、我々はウイルスや細菌感染に伴いNLR-tbの発現が誘導されることを見出しており、NLR-tbは何らかのフィードバック機構を制御しているとも考えられる。以上のことから、実際の感染モデル系を用いてNLR-tbが感染防御に対してどのような役割を果たしていくか追求する必要がある。これらの結果をJ.Immunol誌上にて発表を行った(Kumar H et al.,186,994,2011)。
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