研究概要 |
これまで我々は、day50以降のWEHI3B細胞再拒絶は、LTB4/BLT1経路を介した直接的な抗腫瘍効果によるものではなく、中和抗体(CD4、CD8およびNK)を用いた免疫細胞除去実験よりCD4+(メモリー)T細胞に主に依存することを明らかにした。 平成22年度は、そのWEHI3B細胞腫瘍抗原特異的メモリーT細胞の誘導メカニズムを明らかにするため以下の免疫学的解析を施行した。まず、腫瘍接種から46日目にWT/WGM群およびKO/WGM群の所属リンパ節における各メモリーT細胞をフローサイトメトリー法により比較検討した結果、KO/WGM群において、CD4+エフェクターメモリーT細胞(CD44+CD62L-, CD122+CD62L-)及びセントラルメモリーT細胞(CD44+CD62L+, CD122+CD62L+)、CD4及びCD8+ステムセントラルメモリーT細胞の割合が高かった。また、同リンパ節のTh2細胞及びTh17細胞の相対的割合が高く、3種類の免疫寛容系CD4+T細胞(PD-1+, CTLA4+, GITR+)の割合が有意に減少していた。また腫瘍形成試験中期(day7-15)におけるマウス脾臓を採取しWEHI3B細胞と共培養後、上清中の炎症性サイトカインを測定した結果、WT/WGM群と比較しKO/WGM群の方がTNF-・、IFN-・およびIL-4の産生量が高かった。さらに、腫瘍形成試験初期過程(day2)において、KO/WGMマウス所属リンパ節における樹状細胞(CD11c+)の活性化(CD40+,CD80+,CD86+)及びWEHI3B細胞抗原貪食樹状細胞(PKH26+CD11c+)割合が有意に増強促進されていた。 以上の我々の結果より、in vivoにおけるBLT1シグナルの欠失は、GM-CSFによる抗腫瘍免疫を、腫瘍抗原貪食樹状細胞の遊走及び活性化、それに追従する適応免疫系(Th1, Th2)の活性化及び免疫寛容系を抑制し、より強力な腫瘍抗原特異的メモリーCD4+T細胞を誘導することにより、長期的に維持することが強く示唆された。
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