腎細胞癌CCCで異常発現するmiRNAの機能解析を行い、癌の発生・進行に関与するmiRNAを同定することを目的とする。 CCCにおいて発現上昇していたmiR-210の誘導のメカニズム 腎癌細胞株を用いてmiR-210が低酸素環境下で発現誘導され、転写因子HIF1αによって制御されていることを確認した。腎癌では、しばしばVHL不活性化によるHIF1αの蓄積が観察されており、標的遺伝子群が発現上昇することが癌の進行に関与していると考えられている。miR-210もHIF1αの下流で腎癌の進行に関与しているのではないかと推測された。 miR-210の機能解析 miR-210が細胞増殖に関与しているか調べるため、Caki2細胞株にAnti-miRNAオリゴを導入して、その発現を抑制した。しかし、増殖速度は低下せず、細胞形態にも変化がなかったため、miR-210は細胞増殖の促進には関与していないと考えられた。反対にmiR-210前駆体オリゴを786OやACHN細胞株に導入し、過剰発現させたところ細胞増殖が抑制された。これらの結果はmiR-210が癌促進的な機能を持つという推測と矛盾していた。 miR-210前駆体オリゴを導入した細胞を観察したところ、コントロール群に比較して丸い細胞が著しく増えており、それらの多くで染色体が赤道面に並んでいるのがみとめられた。細胞周期に影響が出ていると考えられ、FACSにより調べてみると細胞がG2/M期に蓄積していることが確認された。細胞分裂異常が起こっている可能性が示唆されたため、微小管を染色したところ、多極紡錘体の形成が確認された。 多極紡錘体は、染色体分配異常を引き起こし、染色体異常の原因となることが知られている。実際にmiR-210導入によりAneuploidyが観察されたことから、腎細胞癌におけるmiR-210発現亢進は、多極紡錘体を誘導して染色体分配異常を引き起こし、細胞に染色体数異常を獲得させることによって発がんに関与している可能性があると考えられた。
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