研究概要 |
(1)前立腺癌幹細胞を単離する目的で、ラット前立腺癌細胞株PLS-10から限界希釈法により亜株SCC2, SCC3を樹立した。SCC3は親株と比較し細胞増殖能、抗癌剤エトポシドに対する薬剤耐性能が高かった。SCC2, SCC3とも前立腺癌幹細胞マーカーの1つCD44の発現状態は親株と有意な違いは無かった。以上よりSCC3は癌幹細胞の性質を一部有することが分かった。(2)前立腺癌原発巣および骨転移巣における癌幹細胞の存在・局在を検索する目的で、原発巣、骨転移巣の前立腺癌組織に前立腺癌幹細胞マーカーCD44、CD133の免疫染色を行った。原発巣にはCD44・CD133陽性所見を一部の癌細胞に認めた。CD44・CD133の陽性所見と癌の分化度の相関は明らかでなかった。骨転移巣ではCD44陽性所見を大部分の癌細胞に認めたがCD133は良い染色条件を得られず検索できなかった。CD44を高発現するヒト前立腺癌細胞株PC3にTGFbetaシグナル阻害剤であるSB431542を100μM曝露すると、有意な細胞増殖抑制作用を認めた。またCD44を高発現するラット前立腺癌組織PLS-Pを頭蓋骨上に移植して作成した前立腺癌骨浸潤モデルラットに、TGFbetaシグナル阻害作用が報告されている薬剤Tranilastを400mg/kg投与すると、対照群と比較して腫瘍体積が有意に減少した。 本研究の結果により、前立腺癌骨転移巣において癌幹細胞が存在する可能性を示唆し得た。またTGFbetaシグナル遮断が将来の前立腺癌治療に用いられる可能性を示した。
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