本年度では、miRNAアレイを用いてN-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine(BBN)誘発ラット膀胱がん(12例)と正常膀胱粘膜(4例)におけるmiRNA発現プロファイリングを行い、がんで異常発現を示すmiRNAの同定を行った。その結果、すべての膀胱がんで共通して発現量が2倍以上低下したmiRNAが6種類認められた。また、そのうちmiR-125a及びmiR-125bはdime thylarsinic acid(DMA)で誘発したラット膀胱がんにおいても発現量の有意な低下が認められた。さらに、ヒト膀胱がんで、非がん部に比較して発現量が低下したことが明らかとなった。これらの2種類のmiRNAの発現が早期増殖性病変においても低下するかを検討した実験では、ラットにBBN及びDMAを含めた8種類の質的に異なる膀胱発がん物質、あるいは3種類の非膀胱発がん物質をそれぞれ4週間投与した。膀胱粘膜におけるmiRNA発現量を検索した結果、miR-125a及びmiR-125b両方ともすべての膀胱発がん物質において共通して発現量の有意な低下が認められた。一方、すべての非膀胱発がん物質では発現量の変動はみられなかった。これらの結果より、miR-125a及びmiR-125bは膀胱発がんにおいてtumor-suppressor miRNAとして働き、早期から膀胱がんの発生に関与することが示唆された。また、膀胱がんの予防および治療における標的分子になる可能性も考えられた。現在、これらの2種類のmiRNAについて、ヒト膀胱がん細胞を用いてPre-miRmiRNA Precursor導入法と組み合わせたプロテオーム解析により、それぞれの標的遺伝子を同定中である。
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