研究概要 |
前年度では、miR-125bは膀胱発がんにおいてtumor-suppressor miRNAとして働き、早期から膀胱がんの発生に関与することが明らかとなった。本年度では、膀胱がん患者および非膀胱がん患者の尿沈渣におけるmiR-125bの量を検討した結果、miR-125bの量と膀胱がんの有無との間に有意な相関はみられなかった。今後、miR-125bは膀胱がんの早期発見マーカーとしての有用性を明らかにするためには、尿中におけるその発現量を検討する必要があると考えられる。また、ヒト膀胱がん細胞を用いてPre-miR miRNA Precursor導入法と組み合わせたプロテオーム解析により、miR-125bの標的遺伝子の同定を行った。7種類の膀胱がん細胞株(RT4, HT-1376, TCC-SUP, SW-780, 5637, UMUC-3およびT24)におけるmiR-125bの発現量を検討した結果、RT4におけるmiR-125bの発現量がもっとも低かったことが明らかとなった。次に、RT4にPre-miR 125bを導入し、Q-Star Elite LC-MS/MS systemを用いて、導入によるタンパク質の変動を検索した。その結果、コントロール細胞に比較して、Pre-miR125bの導入した細胞では21種類のタンパク質の発現量の有意な低下が認められた。これらのタンパク質はmiR-125bの標的遺伝子であることが示唆され、また膀胱がんの予防および治療における直接あるいは間接的な標的分子になる可能性も考えられた。
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