研究概要 |
【研究計画】 当初は平成22年3月までマウス脳腫瘍を作成できる見込みであったが、動物実験のための各種申請やマウス等の輸入に時間を要したため、予定より9ヶ月遅延の平成22年12月に目標を延期し、その分の研究費70万円を繰り越した。 【研究成果】 その後研究は順調に進み、2010年7月6日に凍結胚の形でアメリカからマウスを輸入、胚移植による出産で目的の遺伝子改変マウス(tv-aマウス)2系統(Gtv-a、Ntv-a)を獲得し、9月15目から飼育を開始、10月13目からレトロウイルスベクター(RCAS),による癌遺伝子の体細胞遺伝子導入を行い、12月24日にマウス脳腫瘍の作成に成功した。最初に作成したマウス脳腫瘍モデルは、PDGFBによる悪性神経膠腫(glioma)であるが、約80-90%の確率で腫瘍作成に成功しており、H&E染色による病理学的検討でもWHO grade 3に相当する退形成性乏突起膠腫とgrade 4に相当する膠芽腫が形成されていることを確認した。 【意義と重要性】 この脳腫瘍は国内初のRCAS/tv-aシステムによるマウス脳腫瘍モデルである.RCAS/tv-aシステムは、マウスの脳細胞から直接腫瘍が発生する点で移植法と異なり、遺伝学的にも組織学的にもヒトの脳腫瘍により近いことが知られている。PDGFBによる脳腫瘍モデルは海外で開発され既に使用されているが、日本で初めてこのモデルを導入したことは、今後の日本での脳腫瘍研究において、新たなマウス脳腫瘍モデルの作成や前臨床試験の推進に大きく貢献すると考えられる。
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