研究概要 |
【研究計画】 平成23年4月以降の当初の研究計画は、1)作成した脳腫瘍の解析、2)新たな脳腫瘍モデルの作成、3)マウスを用いた前臨床試験、であった。 【研究成果】 1)PDGFB遺伝子導入による悪性神経膠腫(glioma)と、Shh遺伝子導入による髄芽腫(MB)の解析として、H&E標本作製と免疫染色による確認を行った他、ラマン分光法による解析にも着手した。また、腫瘍細胞からprimarycultureの細胞株を樹立し、導入遺伝子や発現蛋白の確認をPCR法とウエスタンブロット法で行った。 2)新たなマウスモデルとして、c-Mycなどの癌遺伝子を用いた髄芽腫のマウスモデルの作成を行い、Shhとp53 shorthairpinの遺伝子導入による髄芽腫のマウスモデルを世界で初めて作成した。C-Mycの遺伝子導入による髄芽腫マウスモデルも1例だけだができており、現在解析中である。また、4週齢のマウスにおいて、新たな脳内注射法を開発して脳腫瘍を作成し、この結果を脳神経外科専門誌に発表した(J Neurosurg.2012,116:630-635)。 3)マウス脳腫瘍モデルを用いた前臨床試験は、temozolomide、perifosinなどの新薬を含めた抗がん剤を用いて計画中であり、薬剤の入手は完了したが、新規の髄芽腫マウスモデルの完成が遅れたため、今後開始する予定である。 【意義と重要性】 国内初のRCAS/tv-aシステムによる遺伝学的・組織学的に正確なマウス脳腫瘍モデルであり、ヒト悪性脳腫瘍の代表であるPDGFBによる悪性神経膠腫のモデルを日本で立ち上げた意義は大きい。今後、このモデルを使用し、悪性神経膠腫に対する新薬の前臨床試験を進めることが期待される。また、髄芽腫とPNETの新たなマウスモデルは、世界で初めてのモデルであり、これらの稀少な脳腫瘍に対する治療法の開発と発生機序の解明に貢献できると思われる。
|