強毒株Plasmodium berghei (Pb) ANKAが引き起こす脳症は弱毒株Pb XATを複合感染させることによって抑制される。一方で、複合感染マウスは原虫血症の増悪と重症貧血を引き起こし感染後20-30日で死亡する。本研究ではマラリア原虫複合感染では脾臓に蓄積したIL-10R発現細胞が産生する多量のIL-10が原虫血症を増悪させていると推測し、摘脾による原虫血症の変化について解析してきた。その結果、複合感染マウスにおける原虫血症の増悪は摘脾によって抑制され、マウスの生存期間が延長することを見出した。しかし、摘脾による原虫血症の抑制機序は明らかではない。そこで本年度は、まず、摘脾による原虫血症の抑制とIL-10の関係について解析した。 マラリア原虫排除に重要な役割を果たす原虫特異抗体について解析したところ、感染後15日目の複合感染マウス血清中のPbXAT特異的IgGおよびIgM濃度は、PbXAT単独感染マウスと比較して著しい低下が認められた。しかし、摘脾をすることによって複合感染マウス血清中のPbXAT特異的IgM濃度だけがPbXAT単独感染マウスと同程度まで増加した。これらの結果から複合感染マウスにおいてPbXAT特異的IgMは原虫排除に寄与すると推測された。また、複合感染後15日目の血清中のIL-10について解析したところ、摘脾した複合感染マウスの血清中IL-10レベルは摘脾しない複合感染マウスと比較して低下していたが、有意な差異は認められず、弱毒株pbXAT単独感染マウスと比較して高レベルを示した。 本年度の研究結果により、弱毒株Pb XAT単独感染マウスで誘導される原虫排除に関わる免疫応答がPb ANKAの存在によってIL-10非依存的に抑制され、マウスは原虫を排除することができずに原虫血症の増悪と重症貧血を引き起こした可能性が示唆された。
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