近年までオートファジーは細胞内の不要なタンパク質やオルガネラを非特異的にバルク分解する機構であると考えられていたが、最新の研究結果から、オートファジーが病原菌を選択的に分解しているという報告が多くなされている。本研究では細胞内運動性細菌である赤痢菌(Shigellaflexneri)およびリステリア菌(Listeira monocytogenes)に対するオートファジー認識・回避機構を詳細に解析することを目的とした。その結果、リステリアの菌体表面に存在し、リステリアの細胞内運動性に必須のタンパク質であるActAの新たな機能として、リステリア菌のオートファジー認識の回避に重要な役割を果たしていることが明らかになった。具体的には、(i)ActAが細胞内運動性に必要な二つの主要な宿主タンパク質であるArp2/3複合体およびVASPを集積して菌の細胞壁全周を覆うことでオートファジー認識機構から回避していること、(ii)ActAが宿主タンパク質と結合できない場合、菌体が直接ユビキチン化され、ポリユビキチン鎖がp62を介してLC3と結合し、菌体はオートファジーにより認識されること、(iii)ポリグルタミンやGFP-170*といった易凝集性タンパク質とActAのキメラタンパク質を用いた再構成実験の結果、ActAによる宿主タンパク質集積機能により易凝集性タンパク質のユビキチン化およびp62による凝集体の形成が阻害されることが明らかになった。
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