研究課題
リステリアは自然界に広く分布するグラム陽性短桿菌で、人畜共通感染症の病原体である。本菌は上皮細胞や肝細胞、繊維芽細胞、マクロファージなど宿主の広範な細胞に侵入して細胞内で増殖する典型的な細胞内寄生細菌である。リステリアをマクロファージに感染させるとcaspase-1の成熟化が誘導されて細胞死や炎症性サイトカイン(IL-1βおよびIL-18)の産生が起こる。これまで複数のグループからリステリア感染におけるcaspase-1成熟化の誘導機序に関する研究報告が発表されており、ASCと呼ばれるタンパクがこの応答に必須の役割を果たすことが示されている。ASCは複数のNod-like receptor (NLR)のアダプター分子として働くが、どのNLRがリステリア感染におけるcaspase-1成熟化の誘導に関わるかは不明であった。今回、研究代表者は、リステリア感染におけるcaspase-1成熟化の誘導に関わる受容体としてAbsent in melanoma 2 (AIM2)を同定した。その方法としては、HEK293細胞に候補の受容体とともにASCやcaspase-1をトランスフェクトした後にリステリアを感染させ、caspase-1の活性化を検出することで受容体のスクリーニングを行った。このスクリーニングによってAIM2の関与が疑われたため、siRNAを用いてマクロファージのAIM2をノックダウンしたところ、リステリアに対するcaspase-1活性化応答が著明に減少した。これらの結果から、AIM2がリステリア感染におけるcaspase-1成熟化の誘導に関わる受容体であることが明らかになった。この成果は論文として投稿中である。AIM2は細胞内DNAの受容体であることが報告されている。従ってリステリア感染においても菌由来のDNAがリガンドとして働く可能性が考えられる。今回の研究結果は、細胞内寄生菌の感染における病態形成の機序をより明確にし、リステリアの特性を生かしたワクチンキャリアーとしての利用(バクテリオフェクション)にも重要な示唆を与えると考えられる。
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Infection and Immunity 78
ページ: 1884-1894
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