[研究の目的]リステリアはクロファージの細胞質への侵入および細胞内での増殖が可能な細胞内寄生細菌である。本菌はカスパーゼ1の活性化を誘導するが、細胞質に侵入できないリステリア変異株はこの応答を誘導しない。そのため、何らかの細胞内受容体がカスパーゼ1活性化に関わると考えられる。今回、そのような細胞内受容体の同定を試みた。 [研究実施計画]ASC欠損マウス、NLRP3欠損マウス、NLRC4欠損マウス(兵庫医大 筒井ひろ子教授より分与)および野生型マウスからマクロファージを回収し、リステリアを感染させ、培養上清中の成熟型カスパーゼ1を検出する。HEK293細胞にインフラマソーム系を再構築し、リステリアの認識に働く細胞内受容体のスクリーニングを行う。このスクリーニングで関与が疑われた受容体がマクロファージにおいて同様の機能を示すかsiRNAを用いたノックダウンで解析する。 [結果の成果]リステリアに対するカスパーゼ1成熟化応答はNLRP3およびNLRC4に部分的に依存するにとどまり、これら以外の未同定受容体が応答の中心的役割を果たすことがわかった。そこで、複数の受容体候補についてインフラマソーム再構築系を用いて解析したところ、AIM2がリステリアに対する応答を強く誘導することがわかった。さらに、AIM2をノックダウンしたマクロファージではリステリア感染で誘導されるカスパーゼ1成熟化が有意に減弱していた。これらの結果からリステリア感染ではAIM2が異物認識機構として働き、カスパーゼ1活性化応答の誘導に重要な役割を果たすことが明らかとなった。AIM2は細胞質内のDNAを認識することが知られているが、本研究の成果はAIM2が特定の細胞内寄生細菌の認識に関わることを示し、病原体に対する生体防御機構の理解に重要な意義をもつと考えられる。
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