研究課題
ボツリヌス菌は、産生する神経毒素の抗原性の違いによりA~G型に分かれる。これらのうち、C型とD型菌のみホスホリパーゼC(PLC)を産生する。一方、ウエルシュ菌α毒素はガス壊疽の病原因子であり、PLCとスフィンゴミエリナーゼの酵素活性を有している。C型とD型PLC遺伝子の全塩基配列を決定したところ、アミノ酸レベルでα毒素と53%の相同性を示し、酵素活性に重要なZn^<2+>結合モチーフもよく保存されていた。そこで、D型PLC (Dbot α)を組換えタンパク質として発現・精製を行い、酵素活性と生物活性を測定しα毒素と比較した。CoCl_2存在下で卵黄活性では同程度の活性を示したが、ウサギ赤血球を用いた溶血活性においては著しく低かった。ウサギ赤血球膜への結合、BIAcoreを用いたPCとDbot αとの親和性を調べたところ、強い結合が認められた。一方、マウスの致死活性では,著しく低かった。現在、Dbot αの結晶化に成功したので構造解析を進めている。C型とD型菌の中でも卵黄活性を示さないD-4947株とD-SA株を得たので、そのPLC遺伝子の全塩基配列についても決定した。これらのPLCをアミノ酸レベルで比較したところ、2株ともα毒素と47%の相同性を示しZn^<2+>結合モチーフもよく保存されていた。D-4947株とD-SA株において、菌体内のPLC発現を調べるため、ウサギ抗Dbot α抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行ったところ、推定した分子量(46kDa)以外に約30kDaの位置にも強いシグナルが検出された。このことから、2株についてはPLCを産生するが、菌体内のプロテアーゼにより分解を受けていることが推察された。今後、既知のα毒素の立体構造をもとにDbot αの構造解析を行い、酵素活性に重要なアミノ酸残基を調べ、クロストリジウム属の病原性の解明に大いに貢献したいと考えている。
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