アエロモナスは淡水中には多く生息するが、海水中では菌数が減少する。そこで食塩濃度とアエロモナスの毒素産生の関係を調べた結果、アエロモナスは海水中の食塩濃度に相当する3%食塩下ではプロテアーゼおよびリパーゼの産生が抑制される事を見出した。そこで、本研究ではまずアエロモナスのリパーゼの食塩による産生抑制機構の解明を試みた。 まず、食塩による菌体外リパーゼ(ALIP)の産生抑制機構を明らかにするために、本リパーゼ遺伝子の塩基配列を決定し、さらにALIP推定アミノ酸配列をもとに、本リパーゼのペプチド抗血清を作製した。この抗血清を用いてA.sobria 288セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ欠損株でのALIPの局在を調べると、0.5%食塩存在下で本タンパク質は菌体内ではペリプラズムにわずかに検出される程度で、主に菌体外に産生されることが分かった。次に、3%食塩存在下で本タンパク質を同様に検出した結果、3%食塩存在下では培養上清中のALIP存在量は低下し、菌体破砕液中でも0.5%食塩存在下に比べ、ALIP検出量は低下した。この結果から、本タンパク質は3%食塩存在下では生合成される量が低下していると考えられた。そこで、本リパーゼ遺伝子が3%食塩存在下で転写されているかをRNAドットプロットハイブリダイゼーション法を用いて調べた。調べた結果、本遺伝子のmRNAは0.5%食塩存在下では培養6時間で最も多く存在し、3%食塩存在下でも同程度存在することが分かった。以上の結果より、3%食塩存在下でalip遺伝子は0.5%食塩存在下と同程度転写されているが、その後の過程が食塩により抑制されたため、産生量が低下したのではないかと考えられた。
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