研究概要 |
アエロモナスは淡水中には多く生息するグラム陰性桿菌だが、海水中では菌数が減少する。これまで、食塩存在下でのアエロモナスの菌体外毒素産生を調べた結果、本菌は3%食塩存在下ではプロテアーゼおよびリパーゼの産生が抑制される事を見いだした。また、食塩存在下ではメタロプロテアーゼ遺伝子は転写が抑制されている事が明らかとなった。 そこで本研究では、メタロプロテアーゼ遺伝子の転写に関連する領域を明らかにし、それが3%食塩による転写阻害に関与するかどうかを明らかにする事を目的とした。 メタロプロテアーゼ遺伝子を含むDNA断片をPCRで増幅し、プラスミドに挿入した。作成したプラスミドをメタロプロテアーゼ非産生性のAeromonas sobriaに形質転換し、得られた形質転換株のメタロプロテアーゼ産生を調べると、形質転換は野生株と同様に0.5%食塩存在下ではメタロプロテアーゼを産生したが、3%食塩存在下では産生しなかった。 この挿入断片はメタロプロテアーゼ遺伝子の上流領域をおよそ350bp含んでいたが、次に上流領域を300bp、200bp,100bp含むプラスミドを作製した。0.5%食塩を含む普通培地で培養すると、上流領域300bpを含むプラスミドを形質転換した株ではメタロプロテアーゼ産生が見られたが、上流領域が200bp、100bpになるとメタロプロテアーセは検出されなかった。この結果から、遺伝子上流200bpから300bpの間には本遺伝子の発現に必須な領域が存在する事が分かった。 また、メタロプロテアーゼ遺伝子の周辺を解析すると、その下流にはLysR type転写調節因子(LTTR)遺伝子が存在する事が分かった。この転写調節因子がメタロプロテアーゼの産生に関与しているのではないかと考え、メタロプロテアーゼ遺伝子およびLTTR遺伝子を含むDNA断片を増幅し、プラスミドに挿入し、形質転換株を作製した。作製した形質転換株は0.5%食塩存在下でもメタロプロテアーゼを産生しなかった事から、この調節因子は本遺伝子の発現を抑制している可能性が示唆された。
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