グラム陰性菌の表層に形成されるリポ多糖(LPS)は、O抗原、コア多糖、リピドAの3つの部分から成っている。O抗原は、構成される糖の組み合わせによって異なる抗原性を示し、これを利用して菌株の血清型別が行われている。グラム陰性菌における多様なO抗原型がどのようにして出現したのかは不明である。本研究では大腸菌のO-157抗原型に注目し、その分布や水平伝播の様式を解析することで、O抗原の変換メカニズムを明らかにすることが目的である。同じO157抗原型を示すにも関わらず、異なる進化系統群に属するO157株間ではO抗原コード領域が水平伝播している可能性があると予想した。まずは、人糞便および食品より分離した、典型的なO157とは異なる表現型(βグルクロニダーゼ活性陽性およびH抗原型がH7以外)を示す21株の特徴を解析した。7つのHouse keeping geneを用いたMulti Locus Sequence Typingの結果、全株が典型的なO157とは異なる系統に属し、9つの系統群に分類された。非典型的なO157株1株のO抗原コード領域とその周辺(約60bkp)の塩基配列を決定し、典型的なO157であるSakai株(全ゲノム決定株)と比較した。O抗原コード領域を構成する遺伝子セットは2株間で同一であった。さらに、周辺領域に比べてO抗原コード領域では2株間の変異頻度が明らかに低かった。以上の結果より、O抗原コード領域が水平伝播しそれぞれの株で共保有している可能性が示唆された。
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