研究概要 |
A群連鎖球菌は、古くから咽頭炎、猩紅熱などの原因菌として知られていたが、近年劇症型感染症の起因菌となる例が報告されるようになってきた。病気の分子機構は未だ不明な点が多いが、病原因子は大きく2種類に分類することが可能である。前者は、宿主を攻撃する毒素などである。後者は、宿主による攻撃から身を守る防御因子である。このような菌の特徴を抑制することができれば病原性を低下させることができる可能性がある。そこで、本研究ではマウス感染モデルを用いて、A群連鎖球菌による劇症型感染症の発症を抑制する方法について以下の研究を行った。 1.「研究実施計画」に記載した項目について前年度に引き続き検討した。本菌は、様々な手段を駆使して好中球が活性化されるのを阻害していることが明らかになっている。そこで、大腸菌の菌体成分の一つであるLPSが致死率改善効果に寄与している可能性について検討した。この実験において、強力な免疫誘導物質であるLPSを菌体の周りに高濃度で存在させることにより強制的に免疫機構を活性化させることを期待している。A群レンサ球菌は当研究室で保有する劇症型感染症患者由来の臨床分離株の内マウスに対し2番目に病原性の高いGTO1株、及び最も病原性が高いCRO1株を使用した.大腸菌由来のLPS(Sigmaより購入)の効果をテストしたが、統計的に有為な差を得るまでには至っていない。加えて、同様の効果を期待してFCA(Freund's complete adjuvant),Zymosan A,CpG motif(DNA),CTB(コレラ毒素のBサブユニット)をテストしたが、統計的に優位な効果を確認することができなかった。 2.感染後のマウスから菌体を回収し、質量分析装置を用いて宿主内で発現が亢進しているタンパク質を解析した。
|