研究概要 |
【目的】 ウエルシュ菌によるガス壊疽の原因毒素であるα毒素は、血液内に移行すると溶血やサイトカインストーム、そして、最終的に致死を引き起こす。我々は、α毒素によるさまざまな炎症反応、及び、細胞毒性反応にチロシンキナーゼ関連受容体のTrkA、及び、そこに隣接するガングリオシドGM1aが重要な働きを演じている事を平成21-22年度の研究で明らかにしてきた。そこで、平成23年度は、ガングリオシドの合成に重要な酵素をノックダウンさせた細胞を作製し、α毒素とガングリオシドの関係について解析した。 【方法・結果】 ガングリオシドは、大きくa~cシリーズに分類され、GM1aは、aシリーズに属している。そこで、bとcシリーズのガングリオシドの合成に関与するα2,8-sialyltransferase(ST)と各シリーズのシアル酸付加(GM1a合成)に重要な酵素であるβ1,4-N-acetylgalactosaminyltransferase(Ga1NAcT)をノックダウンさせたA549細胞、ST-KD細胞、及び、Ga1NAcT-KD細胞をそれぞれ作製し、α毒素の各細胞に対する結合性、及び、毒素処理によるIL-8遊離に対する影響について検討した。その結果、Ga1NAcT-KD細胞では、コントロール細胞と比較してα毒素の結合性、及び、IL-8遊離が約70-80%抑制されたが、ST-KD細胞ではどちらもコントロールレベルであった。 【考察】 α毒素は、aシリーズのガングリオシド、特に、GM1aに対し高い親和性を持つ事が推察され、さらに、毒素のGM1aの結合にシアル酸が重要な役割を演じていることが強く示唆された。
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