研究概要 |
腸管出血性大腸菌(EHEC)の病原性に必須なLEE遺伝子群の発現は、様々な外部環境シグナルに応答して厳密に制御されている。染色体上の異なる領域にコードされるパラログPchA,B,Cは種々の環境シグナルにそれぞれ応答することで発現量を変化させ、LEE全体の発現を制御するマスターレギュレータとして機能すると考えられている。今年度の研究から、pchA,B,Cの転写開始点を同定し、転写調節領域の欠失解析からプロモーター構造をそれぞれ明らかにした。Tn5ランダム挿入突然変異によってpchAの転写活性が低下する変異株をスクリーニングしたところ、LysR型転写制御因子の一つで、大腸菌K-12株にも存在するLrhAがLEEの発現を制御していることが明らかとなった。LrhAの欠失変異株または構成的発現株を作製し、pchの転写活性を測定したところ、LrhAはpchAとpchBの転写活性化を介してLEEの発現全体をコントロールしていることが明らかとなった。LrhAによる発現制御に必要なpchAとpchBの転写調節領域を同定し、この情報を基に、精製したLrhAを用いたゲルシラトアッセイおよびフットプリンティングアッセイを行ったところ、LrhAが直接pchAおよびpchBの転写調節領域に結合することが明らかとなった。その後の解析から、LEEの発現をコントロールする環境シグナルの少なくとも一つがLrhA-Pch経路を介してLEEの発現制御を行っていることが明らかとなった。したがって、LrhAはLEEの発現をコントロールする環境シグナルの伝達因子の一つとして機能していることが示唆された。
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