敗血症や髄膜炎症状を引き起こす髄膜炎菌は従来までの解析によりいくつかなお接着因子が同定されているがその病原性の分子機構は依然不明な点が多い。そこで、トランスポゾンに40merの識別配列を導入して個々のトランスポゾン変異株が識別できるようにしたsignature tag mutagenesis (STM)を高病原性株ST-2032株に導入してそのトランスポゾン挿入変異体ライブラリーを作成し、ヒト脳血管内皮細胞(HBMEC、への感染性(細胞侵入性)が低下する変異体を単離するネガティブスクリーニングを行なうことにより、髄膜炎菌のゲノム上に散在している病原因子を網羅的に探索することにした。このスクリーニングにより髄膜炎菌の感染(殊に細胞侵入)機構をより詳細に解明して将来的には髄膜炎菌の治療における作用点を探り出せる可能性を秘めると考えられる。本年度においては当初の予定通りに40merのDNAタグを導入したTn10変異体を構築し、髄膜炎菌ST-2032株の精製染色体DNAに対してin vitroでトランスポゾンによる変異導入(以下STM)を行なった後そのSTMを施した染色体DNAを髄膜炎のnatural cometenceを利用して色体上に組み込み、Spc^R ST-2032株として得られるトランスポゾン挿入変異体を約5000株単離し、96ウェルプレニトの1ウェルに植菌、培養、凍結保存してSTM変異株のライブラリーを作製した。さらにはヒト脳血管内反細胞(HBMEC)への威染の至適条件を検討する目的でST-2046株(非病原性髄膜炎菌株)をネガティブ、ST2032株をポジティブコントロールとしてその差が最も顕著に現れるin vitroでの感染条件(時間、感染濃度{宿主細胞に対する細菌の数}等)を検討する。
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