研究概要 |
ポリオウイルスは,小児マヒ(ポリオ,急性灰白髄炎)の病因として知られる向神経性のRNAウイルスである。本研究では,ポリオウイルスによる疾患発症に到るまでの過程の内,消化管から血中を経て,中枢神経系への伝播における(1)細胞レベルでの侵入機構,細胞内輸送および局在化機構,(2)分子レベルでのキャプシド機能領域のリモデリングに焦点を合わせ,それらの生物学的反応に関与する宿主の分子群とその機能を探索し,ポリオウイルスの感染現象における基本を分子レベルで明らかにすることを目的とした。 (1)ポリオウイルスの新規侵入経路の解明 ポリオウイルスに対する膜結合性の新規レセプターの探索を行った。既知ポリオウイルスレセプター(PVR)のアミノ酸配列に相同する新規ポリオウイルスレセブターを同定した。同定した新規ポリオウイルスレセブターについてウイルス粒子の結合部位について解析した結果,PVRに相同する配列を含むドメインがウイルス粒子との結合に関与することを明らかとなった。さらに,新規レセプターの局在について共焦点レーザー顕微鏡により解析を行ったところ,定常状態でエンドソームに局在することが明らかとなり,既知のPVRにおける挙動と異なることを観測した(投稿論文準備中)。 (2)ポリオウイルスP1タンパク質のレセプター結合領域のリモデリング。 ポリオウイルス粒子のレセプターとの結合に関与するcyanion部位における発現系および精製法の開発を行った。大腸菌を利用したタンパク質発現系を構築した。そのタンパク質発現系は,哺乳類のコドンに対応した宿主細胞を用いる等,工夫し,条件検討の最適化を行った。その結果,VP1,2,3のcanyon部位の精製に成功した。VP1,2,3精製タンパク質が既知PVRおよび新規レセプターと結合することも確認し,精製ウイルス粒子が機能的であることを確認した。今後は,レセプターとの結合における最小部位を同定し,細胞侵入に必要な部位の同定を行う。
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