可視化型シュードタイプC型肝炎ウイルスの作製とその細胞侵入機構の解明

2010 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21790443
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 谷 英樹 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (20397706)
• キーワード: C型肝炎ウイルス(HCV) / シュードタイプウイルス / 組換えウイルス / 水疱性口内炎ウイルス / レセプター / テトラシステインタグ

研究概要

これまでC型肝炎ウイルス(HCV)の感染に関与する多くの受容体候補分子が報告されているが、その役割は十分に解明されていない。HCVの細胞侵入機構の解析は、ウイルスが宿主細胞に影響を及ぼす最初の段階としてHCVの生活環を理解する上で重要な課題であり、HCVの細胞侵入機構の解析にはこれまでシュードタイプウイルスや細胞馴化ウイルスを用いて、HCV受容体候補の探索やその相互作用の解析が行われてきた。今回、新たな視点で細胞侵入機構を解析するために、シュードタイプウイルスの蛍光標識モデルの作製を試みた。昨年度、HCVのエンベロープ蛋白質であるE2にシステインタグを付加したシュードタイプウイルスでは感染性が見られず、VSVゲノムにシステインタグ遺伝子を組み込んだウイルスを作製し、感染性が保持されていることを確認できたので、Flash試薬による蛍光ラベル化を施し、細胞への感染の可視化を試みた。様々な方法を駆使して改善を試みたが、バックグラウンドであるVSVそのものの細胞への結合を抑えることが難しくHCVのシュードタイプウイルス特異的な細胞侵入を解析するには至らなかった。そこで、このシュードタイプウイルスを引き続き用いて、HCVが細胞に感染する際に関与する分子を探索した結果、上皮成長因子受容体(EGFR)がレセプター直下で作用している可能性が示唆された。またその下流で作用出来るフォスフォリパーゼCや更に下流に位置するプロテインキナーゼCも関与しており、これらがHCVの感染により活性化されることで最終的にアクチンの脱重合が起こり、HCV受容体群が集合してくるのではないかと考えられた。ウイルス感染による一連のレセプターの局在変化などは可視化により確認できており、今後ウイルスの直接的な可視化が望まれている。

研究成果

• [雑誌論文] Elimination of hepatitis C virus from hepatocytes by a selective activation of therapeutic molecules. (2011)
  • 著者名/発表者名: Xiaoyu Wen, Takayuki Abe, Hiroshi Kukihara, Shuhei Taguwa, Yoshio Mori, Hideki Tani, Nobuyuki Kato, Suzuki Tetsuro, Masashi Tatsumi, Kohji Moriishi, Yoshiharu Matsuura.
  • 雑誌名: PLoS ONE 巻: 6 ページ: e15967
  • 査読あり
• [雑誌論文] Acquisition of complement resistance through incorporation of CD55/DAF into viral particles bearing baculovirus GP64. (2010)
  • 著者名/発表者名: Yuuki Kaname, Hideki Tani, Chikako Kataoka, Mai Shiokawa, Shuhei Taguwa, Takayuki Abe, Kohji Moriishi, Taroh Kinoshita, Yoshiharu Matsuura.
  • 雑誌名: Journal of Virology 巻: 84 ページ: 3210-3219
  • 査読あり
• [雑誌論文] Establishment of an indicator cell system for hepatitis C virus. (2010)
  • 著者名/発表者名: Yoshinori Tanaka, Yoshio Mori, Hideki Tani, Takayuki Abe, Kohji Moriishi, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Tetsuro Suzuki, Masashi Tatsumi, Yoshiharu Matsuura.
  • 雑誌名: Microbiology and Immunology 巻: 54 ページ: 206-220
  • 査読あり
• [雑誌論文] Procyanidin B1 purified from Cinnamomi cortex suppresses hepatitis C virus replication. (2010)
  • 著者名/発表者名: Shenwei Li, Eiichi N Kodama, Yuuki Inoue, Hideki Tani, Yoshiharu Matsuura, Jing Zhang, Takashi Tanaka, Toshio Hattori.
  • 雑誌名: Antiviral Chemistry & Chemotherapy 巻: 20 ページ: 239-248
  • 査読あり
• [学会発表] C型肝炎ウイルスの細胞侵入におけるフォスフォリパーゼCおよびプロテインキナーゼC依存的なシグナル伝達経路の関与 (2010)
  • 著者名/発表者名: 谷英樹、阿部隆之、森石恆司、松浦善治
  • 学会等名: 第58回日本ウイルス学会学術集会
  • 発表場所: 徳島・あわぎんホール
  • 年月日: 20101107-20101109
• [学会発表] Involvement of phospholipase C and protein kinase C-dependent signaling pathways in the entry of HCV. (2010)
  • 著者名/発表者名: Hideki Tani, Takayuki Abe, Kohji Moriishi, Yoshiharu Matsuura.
  • 学会等名: 17th International Meeting on Hepatitis C Virus and Related Viruses.
  • 発表場所: Japan・Yokohama
  • 年月日: 20100910-20100914
• [学会発表] Intracellular delivery of serum-derived HCV. (2010)
  • 著者名/発表者名: Takasuke Fukuhara, Hideki Tani, Mai Shiokawa, Takayuki Abe, Kohji Moriishi, Akinobu Taketomi, Yoshihiko Maehara, Yoshiharu Matsuura.
  • 学会等名: 17th International Meeting on Hepatitis C Virus and Related Viruses.
  • 発表場所: Japan・Yokohama
  • 年月日: 20100910-20100914
• [学会発表] Involvement of ceramide in the propagation of Japanese encephalitis virus. (2010)
  • 著者名/発表者名: Hideki Tani, Mai Shiokawa, Yuuki Kaname, Hiroto Kambara, Yoshio Mori, Takayuki Abe, Kohji Moriishi, Yoshiharu Matsuura.
  • 学会等名: 9th International Symposium on positive-strand RNA viruses.
  • 発表場所: Atlanta・USA
  • 年月日: 20100517-20100523