研究課題
申請者は、内在性のアポリポタンパク質E(ApoE)の発現量をsiRNA法により抑制すると、C型肝炎ウイルス(HCV)粒子の感染性が顕著に減少する事を見いだしているが、ApoEがどのような機構でウイルス粒子の産生に関与しているのかについては全く明らかとなっていない。そこで、ウイルス粒子産生におけるApoEの機能を明らかにすることを目的とし、下記の事項に焦点を絞り研究を遂行した。(a)HCVのウイルスタンパク質とApoEは相互作用するのか?共免疫沈降実験の結果、HCVのE1,E2,NS5AとApoEがそれぞれ相互作用することが明らかとなった。また、結合領域の同定までには至っていない。(b)ウイルス粒子とApoEは相互作用するのか?HCV粒子を抗ApoE抗体で免疫沈降した後に定量RT-PCR解析を行なった結果、免疫複合体にHCVRNAが検出された。さらに、非沈降画分のHCVの感染性が顕著に減少した事から、感染性HCV粒子とApoEが相互作用していることが明らかとなった。(c)ウイルス粒子の感染性にApoEのアイソフォームが関与するか?ApoE抑制細胞にApoEのアイソフォームをそれぞれ発現させ、さらにそれらの細胞から産生されるウイルス粒子の感染性を解析した結果、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)との結合力が弱い事が知られているApoE2が発現している細胞からのウイルス粒子の感染性がApoE3やApoE4と比較し、顕著に低い事が示された。この事から、ApoEとLDLRとの結合力がHCVの感染性に関与している可能性が示唆された。
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