平成21年度は粘膜関連リンパ組織(MALT)のT細胞非依存性(TI)IgA生産誘導機構における樹状細胞サブセットの貢献度について検討をおこない、以下の成果が得られた。 MALTとして腸間膜リンパ節(MLN)、その対照として末梢リンパ節(PLN)から従来型樹状細胞(cDC)および形質細胞様樹状細胞(pDC)を単離し、ナイーブB細胞と共培養したところ、MLN cDCやPLN pDCと比較して、MLN pDCが効率的にIgA生産を誘導することが明らかとなった。また、同培養系にTI IgA生産誘導に重要なサイトカインAPRILおよびBAFFのデコイ受容体(TACI-IgやBCMA-Ig)を添加することで、MLN pDCで誘導されるIgA生産は著明に抑制された。またこれらの結果と相関するように、APRILおよびBAFF発現レベルはMLN pDCが最も高いことが判明した。 次にTI IgA生産誘導におけるレチノイン酸の役割を明らかにするために、上記培養系にレチノイン酸受容体アンタゴニスト(LE540)を添加した。その結果、MLN pDCによるIgA生産はLE540によりほとんど影響を受けなかったのに対して、MLN cDCによるIgA生産は著明に抑制された。またこの結果と相関するように、レチノイン酸合成酵素の遺伝子発現ならびに酵素活性はMLN cDCのみに認められ、MLN pDCではほとんど検出されなかった。以上の結果から、TI IgA生産誘導における粘膜樹状細胞サブセットの貢献度はcDCよりもpDCの方が大きいこと、またpDCにより誘導されるIgA生産はAPRIL/BAFF依存性であるのに対して、cDCによるIgA生産誘導はレチノイン酸依存性であることが明らかとなった。
|