本研究では、IgA生産誘導機構における樹状細胞(DC)サブセットの役割分担を明らかにすることを目的として研究を行い、以下の成果を得た。従来型DC(cDC)と形質細胞様DC(pDC)を腸管関連リンパ組織(GALT:パイエル板、腸間膜リンパ節)と末梢リンパ組織(PLN)から単離し、ナイーブB細胞と共培養したところ、GALT pDCはGALT cDCやPLN pDCよりもIgA生産誘導能が優れていた。これは、IgA生産誘導に重要なサイトカインであるAPRILやBAFFの発現レベルがGALT pDCで著しく高いことに起因していた。次に、GALT pDCにおけるAPRIL/BAFF発現誘導機序を明らかにするために、これらの発現誘導に重要なサイトカインとして知られるI型インターフェロン(IFN)に着目した。野生型マウスと比較して、I型IFN受容体欠損(IFNAR1^<-/->)マウスのGALT pDCではAPRIL/BAFF発現レベルが著しく減少していた。この結果と相関するように、IFNAR1^<-/->マウスでは血清や糞便中のIgA量が減少していた。また、野生型マウスのPLN pDCをIFNAR1^<-/->マウスに移植したところ、その一部がGALTに移入すること、血清や糞便中のIgA量が回復することが認められた。このことから、pDCのAPRIL/BAFF発現誘導はI型IFN依存性であり、定常状態のGALTには構成的にI型IFNを発現する細胞が存在することが示唆された。最後に、構成的I型IFN^+細胞の同定を試みたところ、同細胞はGALTのストローマ細胞であり、PLNや無菌マウスのGALTには存在しないことが判明した。以上の結果から、GALTに移入したpDCは、同所のストローマ細胞の生産するI型IFNの刺激依存性にAPRIL/BAFF発現を獲得することが明らかとなった。本成果は、『Immunity』に掲載された。
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