がん抑制遺伝子Rit1/Bcl11bのT細胞分化における役割を明らかにするために、Rit1遺伝子のKOマウス、条件欠損マウス、ENU誘発点突然変異マウスを作製し、その表現型を解析してきた。その結果、点突然変異を持つRit1遺伝子91アリルが存在するとCD8系列の胸腺T細胞が減少することが判明している。91アリルが存在すると胸腺CD8+細胞が減少した原因は、運命決定後の胸腺CD8+T細胞の生存が低下によるものであることが、本年度の解析で判明した。CD8SP細胞の生存には、IL-7シグナルやBcl-2遺伝子が重要とされるが、これらとは無関係であることを示唆するデータが得られている。さらに、Bcl11bの活性低下に伴いCD8SP細胞にもたらされる変化について解析を行なった結果、Floxアリルと91アリルの複合型ヘテロマウスである、Rit1 F/91 CD4creマウスでは、CD44<high> CD122+のInnate様の表現型を示す細胞が顕著に増加していた。これらの結果は、細胞傷害性T細胞の生存と表現型の維持に対し、Rit1が重要な役割を果たしていることを示している。 さらに、NKT細胞の分化について検討したところ、F/91;CD4creでは、CD1d-alphaGalceramide複合体と相互作用するTCRを持つ前駆細胞自体が減少していること、+/91では、NK1.1highに分化する段階が阻害されることに加え、成熟NKT細胞中にCD4-CD8-のものが存在しないことが判明した。これらの結果は、Rit1がNKT細胞分化のさまざまな段階に関与すると共に、機能においても重要な役割を果たすことを示すものである。
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