本年度、Sirpα+胸腺樹状細胞(tDC)サブセットの分化誘導、胸腺内局在、機能的特徴を解明することを目的として、解析を開始した。胸腺内での局在性に関しては、免疫組織学的解析から、Sirpα+tDCは、胸腺皮質領域に散在性に分布していることを明らかにした。さらに、CCR2分子が本tDCサブセットに選択的に発現しており、CCR2を介したシグナルが、本tDCサブセットの胸腺内への動員、局在に重要な役割を担っていることも見出した。特に、血液胸腺関門を形成している傍血管領域(PVR)において、CCR2のリガンドであるMCP-2が恒常的に発現しており、CCR2を介したシグナルにより、多数のSirpα+tDCがPVR内に局在していることも明らかにした。さらにその特徴的な局在性から、血液中のタンパクとの関連性を考え、蛍光標識ovalbumin (OVA)タンパクやマウスIgGを静脈内投与した。興味深いことに、静脈内投与した蛍光標識タンパクがSirpα+tDCサブセットに選択的に取り込まれることを観察した。機能的には、OVAを取り込んだShlpα+tDCがOVA抗原特異的T細胞レセプター遺伝子導入(DO11.10)マウス由来のT前駆細胞に対してclonal deletionを誘導することを見出したことから、血中抗原に対する中枢性免疫寛容の誘導にSirpα+tDCが中心的な役割を担っていることを証明した。これらの結果は、Journal of Immunologyに報告した。以上の結果から、本細胞を標的とした、自己免疫疾患に対する、新しい治療概念の確立が期待されている。
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