今回の研究成果からマクロファージにおけるAryl hydrocarbon receptor(Ahr)による自然免疫応答の制御機構が明らかになった。Ahr欠損(KO)マウスではLPSに対する感受性が亢進しており、マクロファージにおいてLPSやCpG-ODNの刺激で誘導されたAhrはIL-6などの炎症性サイトカインを抑制していた。その作用機序についても明らかにされ、AhrはNF-κBのDNA binding活性は抑制していなかったがNF-κBの転写活性は抑制していた。具体的にはAhrはStat1と協調しNF-κBと複合体を形成することでIL-6のプロモーター領域上でNF-κBの転写活性を抑制していた。これら内容に関して2009年度J Exp Medで報告した。またAhr KOマウスではコントロールマウスに比べてDSS誘導性の腸炎の症状が悪化していたのに対し、関節リウマチでは症状が軽減していた。T細胞あるいはマクロファージ特異的にAhrを欠損させたconditional KO(cKO)マウスにおいてもコントロールマウスに比べ関節リウマチが抑制されており、現在腸炎においてもこれらAhr cKOマウスを用いて解析を進めている。これら研究成果を基にそれぞれの自己免疫疾患における各免疫担当細胞のAhrの役割について解明していくことで、Ahr agonistあるいはantagonistを用いた関節リウマチや腸炎などの自己免疫疾患、炎症性疾患に対する新たな治療法の確立に結びつくことが期待される。
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