今回の研究成果からマクロファージにおいてダイオキシン受容体であるAryl hydrocarbon receptor (Ahr)がリステリア感染による免疫応答を制御していることが解明された。マクロファージにリステリアを感染させるとAhrが誘導され、Ahrはリステリア感染によるIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を抑制していた。またwild type (WT)マウスとAhr欠損(KO)マウスにリステリアを感染させ生存率を比較したところ、Ahr KOマウスはWTマウスに比べリステリア感染に対する感受性が亢進しており全ての個体が死亡した。次にAhrがどのようにしてリステリア感染による免疫応答を制御しているのかについて解析を進めた。WTおよびAhr KOマクロファージにリステリアを感染させた際にα-toll-like receptor 2 (TLR2)で処理するとAhr KOマクロファージにおけるIL-6やTNF-αの産生がWT細胞と同程度まで抑制されていた。さらにマウスマクロファージ様細胞株であるRAW細胞にAhrを発現させたもの(RAW/Ahr)とコントロールベクターを発現させたもの(RAW/Neo)を作製し、リステリアを感染させた後IL-6のプロモーター活性やNF-κBの活性を比較した。その結果、RAW/Ahrではこれら活性がコントロールのRAW/Neoに比べ優位に抑制されていた。これらの結果からAhrはリステリア感染においてTLR2のシグナルを抑制することでリステリアによる免疫応答を制御していることが示された。リステリアなどの細菌が感染すると敗血症などの重篤な症状が引き起こされることが知られている。本研究の成果からAhrを活性化させるリガンドを用いることで細菌感染による敗血症などの症状に対する新たな治療方法の確立に繋がることが期待される。
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