研究概要 |
I型糖尿病(Type1 diabetes, T1D)は年間発症率こそ10万人あたり1~2人(日本)であるが、腎症や網膜症、神経障害などの合併症を伴う重篤な自己免疫疾患であり、負担の少ない予防・治療法の開発が急務課題となっている。2007年、高密度完全ゲノム関連試験法によるSNPs解析で、新規な疾患感受性遺伝子KIAAO350が同定された。KIAAO350に関しては、非常に有力なSNPマーカー(非翻訳領域、イントロン)が同定され、その一次構造解析から、1)II型膜タンパクであること、2)細胞外領域にC型レクチンドメインを持つこと、3)ヒトからマウスまで種を超えてITAM配列を持つことが確認されている。しかし、発現プロファイルやリガンドを含め、T1Dにどのように関わっているのかという生理的な機能は一切明らかにされていない。本年度の研究では、(1)KIAAO350 mRNAがT1D発症後(NODマウス)の膵臓にて高発現していること、(2)当初の予想とは異なり、KIAAO350蛋白の細胞外への分泌、あるいは細胞表面での発現は認められず、細胞質内に局在が確認されること、(3)KIAAO350は細胞質内で約25kDaのタンパク質と会合すること、また、その会合には種を超えて非常に高い相同性を持つN末が重要であること、を明らかにした。現在、会合する25kDaのタンパク質の同定を行っており、引き続きKIAAO350の生理的な機能をin vitroの培養系から遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの解析で明らかにしていく予定である。
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