1.マウス免疫系細胞のiPS細胞化:マウスCD3^+T細胞、CD19^+B細胞の各細胞に山中4因子をレトロウイルスで導入しiPS細胞化を試みた。~1×10^7個のB細胞から~30個のiPS細胞コロニーが得られた(頻度:3~6.2×10^<-4>)のに対し、T細胞ではiPS細胞は得られなかった。B細胞由来iPS細胞(B-iPS細胞)のB細胞受容体遺伝子は再構成されており、確かにB細胞由来であった。B-iPS細胞は3胚葉から構成される奇形腫の形成能を有し、多分化能をもつiPS細胞であった。2.iPS細胞からの免疫系細胞への分化誘導:MEF由来iPS細胞およびB-iPS細胞から、胚様体形成法、OP9系細胞との共培養法にて免疫系細胞への分化誘導を試みた。MEF-iPS細胞、B-iPS細胞ともに分化誘導後5日目にはFlk-1^+、CD34^+細胞が生成した。OP9-DL1との共培養系では27日目にCD4^+CD8^+、CD8^+、αβ^+、γδ^+のT細胞が生成した。生成したT細胞は抗原刺激によりIFN-・を産生し、TGF-・添加によりFoxP3^+制御性T細胞へ分化した。B-iPS細胞およびMEF-iPS細胞から生成したT細胞のT細胞受容体は多様であった。よってiPS細胞から各種effector細胞へ分化可能な多様なT細胞の分化誘導が可能であることが明らかとなった。一方でOP9との共培養系では、MEF-iPS細胞およびB-iPS細胞のいずれからでもB細胞は生成しなかった。分化誘導時の遺伝子発現解析によるとB細胞分化に重要なPax5の発現が誘導されていなかった。私たちは同培養系で正常造血前駆細胞からのCD19^+B細胞の生成を確認しており、iPS細胞からのB細胞分化誘導にはiPS細胞自体または分化誘導系に何らかの障害がある可能性が考えられた。
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