研究課題
加齢したMst1欠損マウスおいては自己免疫の症状が起こることから、胸腺における胸腺T細胞の選択を検討するために、外来抗原であるOVAに特異的TCRトランスジェニック(Tg)Mst1欠損マウスと雄抗原HY特異的なTCR Tgマウスを作成したところ、OTIIや雌のHY特異的なTCR Tgでは、CD69+CD4+CD8-の数が減少し、Mst1欠損下において、正の選択の異常が示唆された。また、これらMst1欠損マウスでは胸腺におけるFoxP3陽性制御性T細胞数が減少していた。以上の結果から、本研究者は、Mst1欠損マウスでは胸腺細胞のインテグリンを介した動態・接着の異常ににより自己反応性のT細胞の選択や制御性T細胞の産生が破綻して自己免疫の症状が誘導されると考えた。そこで、正常型マウスとMst1欠損マウスから胸腺細胞からDP細胞とSP細胞をフローサイトメトリーにより単離して細胞染色用蛍光染色した。さらにこれらの胸腺細胞をビブラトームにより作製した胸腺スライスの上に加えて組織培養を行い、高酸素条件下で2光子励起顕微鏡により胸腺細胞の動態を観察した。その結果、胸腺皮質におけるDP細胞の平均移動速度(約5μm/min)に変化に差は見られなかったが、髄質におけるSP細胞の平均移動速度が16μm/minから11μm/minに低下した。また、正の選択後を受けたDP細胞はCD69を発現するため、正常型マウスとMst1欠損マウスからCD69陽性DP細胞を単離して、同様に動態を比較した。するとMst1欠損CD69陽性DP細胞は平均速度(約7μm/min)こそ有意な差は見られなかったが、皮質から髄質へ向かう直線的な移動の頻度が低下していた。以上より、Mst1欠損マウスでは正の選択後の胸腺DP細胞の皮質から髄質へのアクセスや髄質内におけるSP細胞の移動が異常であると考えられる。髄胸腺の髄質ではインスリンなど末梢の組織特異的抗原に対する自己反応性のT細胞の負の選択や制御性T細胞の産生が行われおり、Mst1欠損による胸腺細胞の動態異常が、これらの過程の破綻を引き起こす可能性が示された。
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Immunity
巻: 34 ページ: 24-38