本研究では、foxp3遺伝子のIPEX変異の一つであるA384T変異が、T_<reg>の機能や分化、恒常性維持にどのような影響を与えることで、自己免疫疾患を惹起するのかを解明することを目的としている。 我々は個体レベルでのA384T変異の影響を評価するためFoxp3^<A384T>ノックインマウスを作製しており、健常な雌性IFoxp3^<A384T/+>マウスにおける末梢リンパ組織ではFoxp3^<384T>変異T_<reg>が減少していることを確認していた。本年度の研究では、この減少は増殖能低下によるものと予想し、細胞増殖マーカーであるKi-67の発現を評価したところ、その発現は末梢リンパ組織のFoxp3^<A384T>変異T_<reg>では野生型T_<reg>と比べて低下していた。なお、T_<reg>の発生器官とされる胸腺ではそのような現象は認められなかった。次に、末梢リンパ組織からFoxp3^<A384T>変異T_<reg>と野生型T_<reg>とを単離し、それぞれのT細胞活性化抑制機能について検討を行った。その結果、両者の抑制機能に有意な差は認められなかったが、アッセイ中にFoxp3^<A384T>変異T_<reg>が減少していることを見出した。以上の結果から、A384T変異はT_<reg>分化や機能にはほとんど影響を与えず、増殖能を選択的に減弱させることを突き止めた。 さらに、両者の遺伝子発現プロファイルを比較した結果、2倍以上の発現差があるFoxp3標的遺伝子を11個同定することができた。現在、これら11個の中にT_<reg>の増殖に関わる重要な因子が含まれていると考え、個々の候補遺伝子について強制発現ベクターやノックダウンベクターを作製しているところである。 現在、T_<reg>の増殖能についてはほとんど解明されていないが、本研究によってその分子機構が明らかにできるはずである。また、根本的治療法が確立されていないIPEX症候群の新規治療法へ繋がる可能性も高い。
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