ナチュラルキラーT(NKT)細胞の分化経路は胸腺のCD4陽性CD8陽性のダブルポジティブ(DP)から生まれてくると考えられている。我々はNKT細胞前駆細胞がDPよりも未分化なダブルネガティブ(DN)のステージ4(DN4)に存在することを明らかにした。このNKT細胞前駆細胞は野生型及びにCD1d欠損マウス両方に存在する。これらの結果はNKT細胞のT細胞抗原受容体であるVα14Jα18受容体が細胞表面に発現する前にNKT細胞の発生を特徴づける新しい概念を提唱するものである。また、胸腺におけるNKT細胞への発生分化は、他のαβT細胞のそれと異なることを示すものであり、より未分化な段階でT細胞発生分化系列から分岐するものであると考えることができる。DN4の胸腺細胞は大半がDPに分化する直前の不均一な細胞集団と捉えることができるため、DN4中のNKT前駆細胞の分離同定とその後の分化経路の明確化を試みた。DN4胸腺細胞中のおよそ0.05%がNKT細胞前駆細胞であり、試験管内および生体内における実験によってDN4胸腺細胞中のNKT細胞前駆細胞はNKT細胞の選択に必須と考えられていたCD1dを必要とせず、転写因子PLZF依存的にCD44陽性の前駆細胞へと分化することを見出した。さらに一細胞qPCR方法によるNKT細胞前駆細胞の割合と転写因子の発現パターンの解析の結果、他のαβT細胞のそれと大きく異なることを見出した。これらの結果はNKT細胞がCD1dによる正の選択前に特異的前駆細胞から分化する新しい経路があることを示したものであり、CD1dは分化成熟したNKT細胞の発生に必須の分子であると捉えることができる。
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