本研究では、獲得免疫に必要なヘルパーT細胞が抗原提示細胞(APC)と免疫シナプスを形成し活性化する過程で、活性化レベル調節の鍵となるT細胞抗原受容体(TCR)ミクロクラスターを生理的な条件で解析し、TCR動態と生体反応や細胞機能との相関を明らかにすることを目標にしている。具体的には(1)in vivoで生成されたTCRミクロクラスターやcSMACの観察を行い、生体内免疫反応との相関をみる、(2)人工脂質膜を用いたcSMACやTCRミクロクラスター動態の定量的な解析からTCR動態と細胞機能の関係を明らかにする。 本年度進捗状況 (1)免疫シナプスの観察に関して、TCRの構成分子にGFPを付けてgene targetingしたT細胞は生理的発現量を維持している点は良いが、過剰発現に比べて10から100倍程度GFPの発現が低く検出しにくいことから、in vivoでそのまま見るのではなく、組織を崩してImage streamでの観察を行った。しかし、それでもcSMACは観察できたがTCRミクロクラスターは検出できなかった。またcSMACに関しては内容が酷似した論文が発表されてしまったので、プロジェクトの軌道修正が必要である。 (2)-1TCRミクロクラスターによる細胞活性強度調節機構として微小管を伝うダイニンモーターがTCRミクロクラスターをcSMCに運ぶ事により活性化を負に制御している事を明らかにし、論文発表した。更にこの結果に基づいてダイニンミュータントマウスを入手し、同じ強度の抗原でありながら免疫シナプス形状が違う条件での免疫応答を、マウス生体を用いて観察する計画をスタートした。 (2)-2人工脂質膜を用いたcSMACやTCR microcluster動態の定量的な解析から、抗原親和性に依存してTCRミクロクラスターに集まる分子の数、密度が変化する事が分かった。また下流のシグナル分子に付いても、抗原親和性に応じて集まる分子の数、場所、TCRとの位置関係が変化する事を突き止めた。
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