本研究は、在宅医療体制が整備されていない地域に、大学病院も参加する形で電子メールを用いたメーリングリストによる在宅診療ネットワークを導入し、関係するスタッフの医療・介護知識の向上と、入院日数短縮の有無や再入院回数の低下など医療経済に与える影響を明らかにすることを目的としている。平成21年度は4月より電子メールによる在宅診療ネットワークへの参加を在宅診療関係者に呼びかけたが、通信セキュリティに関する懸念の声が大きかったことから、ネットワークをメーリングリスト形式から大学病院をサーバーとするチャット形式に変更した。このため、チャット開設に伴うソフト開発を業者に依頼し、12月までに開発を終了した。研究協力者である在宅診療関係者は、携帯電話でもパソコンでも共通診療録(チャット)を閲覧することが可能であり、また診療録は登録コードと暗証番号がないと開かないため、セキュリティ問題が大幅に改善された。一方、研究参加を促すためにチャットと接続できる携帯電話を16台契約し、一部の在宅診療関係者に無償で貸与した。この結果、平成22年1.月の登録開始より、4月までに筋萎縮性側索硬化症2例、パーキンソン病1例、脳梗塞1例、アルツハイマー型老年認知症2例の計6例の登録があった。運用中の診療録は全例事務局で記載内容を閲覧し、違反記載がないかを確認している。また、事務局は病院側の担当医師や看護師にもチャットへの参加を促しており、病院と在宅の意見交換に活発に用いられている。
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