研究概要 |
本研究は、在宅医療体制が整備されていない地域に電子メールを用いたメーリングリストによる在宅診療ネットワークを導入し,関係するスタッフの医療・介護知識の向上と,入院日数短縮の有無や再入院回数の低下など医療経済に与える影響を明らかにすることを目的としている.平成22年度は,昨年度に開発したパソコンでも携帯電話でも閲覧可能な閉鎖型ITネットワーク(チャット形式)を共通診療録とし,福井県内でチーム医療による在宅診療を実施している13症例を対象に,順次利用を開始した.症例は筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)が4例,認知症が5例,パーキンソン病が2例,脊髄小脳変性症が1例,脳出血後遺症が1例で,認知症の2例を除く11例が全介助状態であった.このうちALSの1例は開始後1か月で死亡した. 本研究は訪問診療を担当する診療所5か所,居宅介護支援事業所9か所,訪問看護ステーション7か所,ディサービス施設3か所,短期入所施設4か所,薬局1か所,歯科医院1か所の協力を得て運用されている.しかし,記録形式が利用しづらい点,ソフトにソート機能がないなど利用面での問題点が指摘され,また,診療録を記載する医師,看護師,ケアマネージャー,歯科医師,薬剤師,ヘルパーなど多職種毎の記載内容に隔たりがあり,実用的な運用を行うための記載項目の整備が必要と考えられた.このため,ソフトの変更や高齢者総合機能評価の教育と導入など,新たな対策に取り組んでいる.
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