近年の高度な高齢化社会において課題である医療費抑制には、疾病予防や健康維持に対する方策が効果的であると考えられる。これらの方策をたてる上で十分な情報の確保が必須となるが、その一つの候補として殆どの病院において利用されている病院情報システム内の医療情報データベースがある。全国に散在するこれら医療情報を統合し利用できるようになれば疾病予防方策を検討するための情報量は十分に確保できるものと考えられる。近い将来実現されるであろう統合医療情報データベースより得られる大規模医療情報データを解析して様々な疾病予防のための病態推移予測モデルの構築を目指す。 本課題では高知大学医学部で所有する医療情報データを利用して大規模医療情報データを扱う統計学的手法を開発し、更に病態推移予測モデルを開発する。方法としては個人における状態の遷移(検査値の変遷)を確率過程に従う現象として捉えモデル化した病態推移予測モデルを構築し生活習慣病関連する検査の時系列データに適用して、各検査値におけるモデルの変数分布を求める。この変数分布は個人の既往歴やその時点での状態に影響されるため、集団の適切なカテゴリー設定が必要となる。集団における適切なカテゴリーを検査値毎に明確化し、得られた変数分布を用いて病態予測を検証してモデルの予測に対する適用範囲を明確にする。 平成21年度では、糖尿病の診断基準の一つであるHbAlcのデータ解析を中心に(1)医療情報データベースからの検査値時系列データの抽出、(2)各検査値時系列データのカテゴリー設定と事前解析、(3)潜在曲線モデルによる検査値系列データの変数分布の導出を行った。モデルの妥当性を評価する方法を検討しながら、最終的な病態予測への適応とその適応範囲の明確化を平成22年度に進める。
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