研究概要 |
大規模医療情報データを用いた疾患予防を目的とした病態推移予測モデルの構築を目指し、高知大学医学部附属病院で所有する医療情報データベースの検査値時系列を用いて、個人における検査値の変遷を予測するモデルの構築を行ってきた。本課題では糖尿病の診断基準の一つであるHbAlcの検査値時系列データを対象として集団の従う分布を背景に個々のデータを評価しながら解析できる潜在曲線モデルを集団の特徴抽出と個々のデータ予測を可能なモデルとして検討した。HbAlcの検査値時系列データは性別および初期検査値(4.0%~5.5%,5.5%~6.5%)でのカテゴリー分け行い、それぞれカテゴリーにおいて直線近似をもとにした潜在曲線モデルを適応した。分布関数の違いによる比較とバラメータ分布の決定を行い先行研究と整合性のある結果となった。さらに採用した潜在曲線モデルの適応範囲を調査する為に、数値シミュレーションによって得られた理想的な模擬データを用いてモデルの適応範囲を調査した。個人の傾向から集団の特徴を導出する従来型の解析手法との比較からサンプル数が比較的少ない場合でも集団の特徴を正確に推測できることが示された。解析対象とする患者数および一人当たりのデータ数を十分大きくとることによって、もとのとなる分布を再現できる一般的な性質は確認できたが、量的な見積りは元となる分布の幅に依存する傾向があることがわかった。これらの解析を通して、検討した潜在曲線モデルには、揺らぎの取り扱いが不十分であり、個人に起因する検査値の揺らぎ(分布)と測定誤差などの外的な要因による揺らぎを別にした取り扱いが重要であると考えられた。
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