慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療は、ガイドラインに基づいた医療選択が推奨されているものの、その診療のばらつきは大きいことが予測されている。本研究では、COPD患者に対して実施されている診療過程の質を定量化し、疾患アウトカムとの関連を検討することを目標にしている。平成21年度は、宮崎県下で呼吸器専門診療を担う5つの医療機関において、COPD患者の平成21年の1年間の診療記録を用いて、診療過程の質を評価し、急性増悪に対する影響について調査することであった。診療過程の質の評価には、RAND's Quality Assessement Tools systemにおける「COPD診療に対するQuality Indicators (QI)(全20項目:安定期8項目、急性増悪期12項目)」を参考にした。QIの信頼性・妥当性は海外で検証されているが、日本での検証はないため、日本語版への翻訳、現在のエビデンスや診療内容に照らした項目の一部変更が必要であった。具体的には、研究代表者が、既存のQIの翻訳に加え、現在の日本および欧米で使用されているCOPD診療のガイドラインや新たに検索しえた文献のレビューを元に、QIの新項目の作成を行った。次に、宮崎県内の9名の呼吸器専門医によって既存のQIの翻訳の修正と新項目の是非(QI項目としての適切性、診療記録からの情報取得性)について評価頂いた。この評価結果から新たなQI(全25項目:安定期11項目、急性増悪期14項目)を作成した。このQIを用いて、各対象医療機関でCOPD患者の診療過程の質を診療記録から調査した。また1年間の急性増悪の発生および交絡要因と考えられる種々の要因についても調査した。現在、診療過程の質の定量化およびアウトカムである急性増悪との関連について解析中である。
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