慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療は、ガイドラインに基づいた医療選択が推奨されているものの、その診療のばらつきは大きいことが予測されている。本研究は、COPD患者に実施されている診療過程の質を定量化し、疾患アウトカムとの関連を検討することを目標にしている。COPDの診療過程の質の評価指標としてRAND's Quality Assessement Tools systemにおける通常診療あるいは急性増悪に対するQuality lndicators (Ql)をもとに新たなQl(全25項目:安定期11項目、急性増悪期14項目)を作成した。このQlを用いて、前々年度に宮崎県下の5つの医療機関でCOPD患者の診療過程の質を診療記録から調査し、また1年間の急性増悪の発生および交絡要因と考えられる種々の要因について横断的に調査した。適切な診療過程を示した患者毎の割合は、安定期で平均52.6%、急性増悪期で71.5%であり、患者毎にばらつきも認めた。更に対象者を安定期Qlの中央値50%で2群に分け、重要な疾患アウトカムである急性増悪の割合との関連について検討したが、明らかな関連は認めなかったもののQl低値群でやや急性増悪の割合が高い傾向があった。本研究で明らかとなったQlのばらつきの原因として、まず患者側の要因を探索するためパイロット的に個人面接を行った。患者側の要因としては、患者本人や家族の疾患に対する理解、家族からの支援状況、医療者や診療に対する満足度、処方内容や薬局対応に対する満足度などが挙げられた。また医師側には調査結果について各施設にて報告を行った。今後はさらに患者側、医師側に対して診療過程に影響を与える因子について調査を行い、また対象患者のその後2年間の疾患アウトカム(急性増悪)との関連について検討し、診療過程の質の評価であるQlが予後予測の指標として適正か評価する予定である。
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