慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療は、ガイドラインに基づいた医療選択が推奨されているものの、その診療のばらつきは大きいことが予測されている。初年度にCOPDの診療過程の質の評価指標として通常診療あるいは急性増悪に対するQuality Indicators (QI)(全25項目:安定期11項目、急性増悪期14項目)を作成した。このQIを用いて、宮崎県下の5つの医療機関でCOPD患者の診療過程の質を診療記録から調査し、1年間の急性増悪の発生との関連について横断的に調査した。その結果、診療過程の質にはばらつきがあり、急性増悪発生との関連が示唆された。QIのばらつきの原因としては患者側、医師側に対して診療過程に影響を与える因子が予測された。本年度は、対象患者の観察期間をさらに2年延長し、診療過程の質と急性増悪との関連だけでなく全死亡との関連について再度診療録調査を行った。対象者を安定期QIの中央値50%で2群に分け、死亡割合を検討したところ、統計学的な有意差はなかったもののQIの高スコア群で9.8%、低スコア群で18.4%と高スコア群で死亡割合が低い傾向があった。また、急性増悪の発生割合は、1年間の横断研究時点の結果と異なり、両群でほぼ同様であったが、人年あたりの急性増悪による入院日数は高スコア群で有意に少なかった(高スコア群:5.1日/人年、低スコア群:9.1日/人年)。以上の結果から、今回作成したQIと予後との関連性も示唆され、QIが予後予測の指標としての可能性もあることが考えられた。本研究結果をもとに、COPDの診療過程の質のばらつきが少なくなり、またそれにより疾患アウトカムが改善されることを期待する。
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