研究課題
医師の地理的偏在について、日米英の国際比較を行った。まず日英比較では、日本の診療所医師は、英国の診療所医師に比べて地理的偏在度が著しく高く(ジニ係数で約2倍程度)、日本における「総合医」の不在および自由開業制度が医師の偏在を助長している可能性が示された。今後日本において総合医の育成を政策的に行うことの重要性が示唆された。日米比較ではまず医療過疎地における医師数の増減を比較した。過去25年の推移は、米国では地域が医療過疎であるほど医師数は減っていく傾向があるのに対して、日本では医療過疎であるほど医師数が増えていく傾向が見られた。日本では自治医科大学の設立運営や、国が行うへき地医療対策、および各自治体レベルでの対策が一定の効果を挙げている可能性が示された。さらに国全体での医師の地理的偏在度の推移を日米で比較した。両国ともに医師は人口分布に対して均等になるよう分布してゆく傾向はなかった。米国では医師は所得分布に従って分布してゆく傾向が見られるのに対して、日本ではそのような傾向は見られなかった。これは日米の医療保険制度の違いが大きく影響した結果と考えられた。加えて医師の診療科目ごとの数と地理的分布を日米で比較した。2006年時点で、日本の麻酔科医、放射線科医、救急医、病理医は単位人口あたり米国の半分以下であった。また日本では開業率の低い科ほど医師数が少なく、地理的偏在度が高くなる傾向が見られ、開業の困難さがその科の医師数を規定している可能性が示された。まとめると、医師の地理的偏在や診療科偏在は国の医療保険制度、医師養成システム、開業に関する諸制度等の影響を大きく受けることが明らかになった。偏在の是正のためにはこれら社会的因子に対する政策的介入が必要である可能性が示された。
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医療と社会
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Health Policy
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Rural and Remote Health
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/cbms/scholarship.html