研究概要 |
【具体的内容】対象疾患は脳血管障害,大腿骨近位部骨折とし,入院中にリハを受けた患者を対象とした.調査方法は健康効用値尺度であるHUI3を用い,担当療法士による代理人回答で記入しリハ開始時に評価を行った.HUI3に関しては我々の先行研究において,本人回答と療法士による代理人回答との一致度が高く同等的信頼性が認められたため,本人回答できない場合でもHRQL評価が可能であることより本研究に用いた.統計についてはノンパラメトリック手法を用いIBM SPSS statistics 19を使用し,項目反応理論分析については,MULTILOG 7を用いた.本研究の実施に当たっては,新潟医療福祉大学倫理委員会の審査と承認を得ており,評価の前に紙面上で本人または家族に説明を行い,同意を得た.結果,対象者は327名(平均年齢75.0±13.1歳,男性150名)であり,内訳は脳疾患が208名,大腿骨近位部骨折が119名であった.病棟分類は急性期病棟が152名,回復期病棟が175名であった.健康効用値は,Globalscoreが-0.03,視覚が0.78,聴覚が0.77,発話が0.66,移動が0.20,手先の使用が0.66,感情が0.62,認知が0.42,疼痛が0.65であり,移動と認知で低い値を示した.項目反応理論分析では,難易度が低い項目としては移動であり容易に回答できる項目であることが分かった.他の項目については中等度の難易度であった.識別力については0.2~0.3以上あれば十分とされるが,視覚0.68,聴覚0.93,発話1.43,移動1.08,手先の使用0.73,感情1.97,認知3.00,疼痛0.61であり,全ての項目で高い識別力を示した.特に感情と認知の項目において高値であった.【意義・重要性】HUI3の測定特性としては,各項目に回答する難易度が中等度であり識別力も高い尺度であることより,対象者に対して適切な評価を行えることが示された.また,その中でも特に感情と認知の面において高い識別力を示したため,身体面に加えて精神面へのアプローチも多いリハにとっては,アウトカム指標として有用であることが示唆された.
|