国内の鍼灸師養成施設(大学、専修学校、視覚特別支援学校)を対象として、鍼灸の安全性教育(講義、実習)に関するアンケート調査を実施した。回答率は全体で64.6%(158件中102件)、晴眼校(晴眼者を対象とした養成施設)60.4%(91校中55校)、視覚特別支援学校(視覚障害者を対象とした養成施設、大学を含む)70.1%(67校中47校)であった。アンケート結果を「鍼灸医療安全ガイドライン(尾崎昭弘・坂本歩・鍼灸安全性委員会編、医歯薬出版、2007年)」等が推奨(義務ではない)する感染防止対策を基に得点化したところ(60点満点)、晴眼校24.0±5.0点(平均±標準偏差)に対し視覚特別支援学校は21.5±5.2点と低く、また、晴眼校において伝統校(1999年以前に開校、12校)の25.6±5.6点に対し、新設校(2000年以降に開校、43校)は23.6±4.8点と低かった(全体平均22.8±5.2点)。同様に、副作用および過誤について検討したところ(72点満点)、晴眼校42.8±13.7点に対し視覚特別支援学校は43.2±14.7点と低く、また、晴眼校において伝統校51.2±9.7点に対し新設校は40.5±13.8点と低かった。以上の結果から、鍼灸の安全性教育において、養成施設間(晴眼校と視覚特別支援学校、晴眼校の伝統校と新設校)に差があることが示唆された。これらの差は、晴眼校と視覚特別支援学校における教員養成制度の相違、また、2000年以降、急速に増加した晴眼校において、急造された経験の浅い教員の採用や国家試験に偏った教育に起因するのではないかと推察された。鍼灸臨床における有害事象(感染、副作用、過誤)が、これら養成施設間の教育の差に起因するか否かについては明らかではないが、教員の資質向上に向けた新たな取組みが必要であると考えられた。
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